少子高齢化による問題点のひとつとして近年、空き家が取りあげられるようになりました。
もちろん高齢化だけが理由ではないでしょうが、とにかく住む人のいない家屋が増え続けている傾向にあります。
ではその空き家にはどういった種類があり、増加に伴いどのような問題が潜んでいるのかをくわしく解説していきましょう。
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弊社へのお問い合わせはこちら空き家の種類とは?意外と知られていない4つの分類方法
総務省が5年に1回実施する住宅・土地統計調査によると、直近のデータである2018年の空き家の総世帯数は約849万戸で、過去最高となっています。
また日本全体の総住宅数に占める割合も13.6%と高く、このパーセンテージも上がることはあっても下がることは当面ないと見られています。
過去最高の数字を出した背景としては少子高齢化などがあり、今後もこの数は増え続けるとみられており、政府も2015年にその対策について特別措置法を制定しました。
空き家とは、と聞かれると漠然と誰も住んでいない家という認識を持つ方は多いわけですが、実はそこには明確な判断基準とそれぞれの性質によっての分類方法があるのです。
国土交通省が示す、具体的にこれが空き家だと言える判断基準としては、まずその住宅の用途、そしてその家に人が出入りしているかどうかといったものがあります。
そこに電気やガス、水道などのライフラインの利用状況が加わり、そのうえで登記や所有者の住民票がどうなっているのかといったことを基準にするのです。
また建物や敷地内が適切に管理されているのか、所有者がその住宅をどういった考えで所有しているのかといった所有者自身の主張も重要なポイントです。
これらが空き家であるのかそうでないのかを客観的に判断する材料となるわけですが、ここで空き家として判断される場合は、さらに4つの種類に分類していきます。
1つめとしては賃貸物件用の住宅があり、これは空き家全体の50.9%、つまり半分以上を占めるほど多いもので、新築・中古問わず賃貸のために建てられた住宅のことです。
2つめは売却用の住宅で、これは売買を目的としていながら空き家の状態になっているもので、全体の3.5%という割合になっています。
3つめは二次的住宅と呼ばれるもので、これはいわゆるセカンドハウスや別荘など、通常は誰も住んでいない住宅のことで割合としては全体の4.5%です。
そして4つめがその他の住宅となり、転勤や入院などの原因で長期的に不在となっている住宅と取り壊し予定の住宅のことを指し、全体の41.1%を占めています。
空き家のなかで増加率が高いのはどの種類か
先述した4つのなかで、増加率が高いのはどの種類なのかを見ていくことにしますが、2013年と2018年の住宅・土地統計調査で比べてみましょう。
それによるとまず賃貸物件用の住宅が2015年と比べ2018年は2万戸の増加で増加率は0.4%、売却用の住宅が同じく1万戸減でマイナス4.5%です。
さらに二次的住宅は3万戸の減少で率としてはマイナス7.3%、そしてその他の住宅が29万戸増でプラス9.1%といった数値での推移です。
2003年の調査までは賃貸物件用の住宅の増加が目立っていましたが、その年の調査を境に徐々に下がっていき、直近のこのデータではその他の住宅の増加が著しいことがわかります。
その他の住宅はこの20年間で149万戸から318万戸と、約2倍にまで増加し、そのなかでも木造の一戸建ての割合がもっとも多くなっています。
このデータからわかる空き家が発生する原因としてもっとも一般的なものが、高齢の親が高齢者向けの施設に転居する、あるいは亡くなるといったことでしょう。
その結果、その家を子が相続することになっても、子はすでに自分の家を持っていたり、遠方に住んでいたりといった理由で、その家に住むこともなく空き家となっていくわけです。
団塊の世代を含めた高齢者は今後急激に増えることが簡単に予測でき、それに伴って誰も住むことのない家が増えていくのもこれもまた簡単に想像ができるのです。
住むことのない住宅は老朽化が早く、資産価値もどんどんと失われていくため、所有者としては定期的な管理をしたいところでしょう。
ただ管理にはそれにかかる時間や労力など所有者でなければわからない苦労も多く、他人がむやみに干渉できるものではありません。
もちろん売却といった方法もありますが、老朽化が進んだ住宅には買い手がつきにくく、更地にするにしても、膨大な費用がかかってくるわけです。
こういったさまざまな事情が折り重なっているという背景があり、その他の住宅の全体に占める割合と増加率が際立って目立つようになっているのです。
その他の住宅に含まれる空き家を放置しておくとどうなるのか
4つの空き家の種類のなかで、賃貸物件用の住宅と売却用の住宅は誰かが住む予定や可能性があり、二次的住宅は定期的に所有者などがそこを訪れることとなります。
つまり4種類のうち上記の3つは人が住むための充分な管理ができており、空き家とみなされるものの、社会的に大きな問題にはなりにくいと考えられます。
しかしその他の住宅に目を向けてみると、ほとんどの物件は管理が行き届いているとは言い難い状態で、まさに放置状態となっているわけです。
定期的な管理がおこなわれることもなく、ただ朽ちていくだけのその他の住宅をそのまま放置しておけば、どういった問題が起こると考えられるでしょう。
まずは倒壊の危険が挙げられ、老朽化が進み柱などの住宅資材が家屋の重みに耐えきれなくなり、最終的に崩れ落ちることがあります。
もし所有する家屋が倒壊すれば、たとえば隣家への被害や通行中の歩行者、車などへの直接的な危険を与えることも充分にあり得るわけです。
建物の維持保全は所有者に課せられた努力義務であるため、もし倒壊により事故が発生した場合、多額の損害賠償を請求されることになります。
その他の住宅を放置する問題点として次には、衛生面で著しく有害となる恐れがあるというもので、これは近隣の住宅に大きな影響を与えるものです。
放置された住宅は庭に雑草が生い茂り、室内は湿気がこもりカビが発生するなどして、環境面・衛生面で劣悪なものになってしまいます。
そうした状況では、雑草をすみかにする小動物や虫が集まることになり、また室内も同様にダニやゴキブリなどにとって快適な環境になっているわけです。
これらの虫や小動物はエサを求めて徘徊するようになり、近隣の住宅へ侵入し、新たにそこへ巣を作るということも考えられます。
ほかにもダニの大量発生が原因で近所の住民がアレルギーを発症する可能性もあり、衛生面での悪影響は計り知れないものとも言えるのです。
また空き家は不審火の発生源や不法投棄のターゲット場所、犯罪者の隠れ家ともなりやすく、防犯面から見ても問題のある住宅なのです。
ほかにもその地域の景観としてみても、その建物があるだけでその地域全体の景観が損なわれる状態となり、たとえば賃貸物件の入居率などに影響を及ぼします。
こうした問題を解消するために2015年から自治体は特定空家の制度を利用できるようになり、もし特定空家に指定されると固定資産税の優遇措置が適用されなくなります。
つまり特定空家とならないよう、定期的な管理をおこなうか、費用はかかっても売却といった方向で考えていくことが所有者として求められているわけなのです。
まとめ
この記事を読み、空き家とは具体的にどういったものなのか、意外と知らないことに気付いたのではないでしょうか。
もしそういった誰も住む予定のない家屋を所有しているのであれば、所有者として近隣への影響も考える必要もあり、なるべく早期の対策を施してください。