お金がかかる子育て世帯にとって、少しでも親からの支援があると生活が楽になり、子どもの教育資金も捻出しやくなります。
しかし、一方で親からの支援は贈与税がネックとなるため、なかなか支援にまで踏み切るご家庭が少ないのも事実です。
そんなときは相続時精算課税制度を活用すると便利です。
今回は、マイホームの購入や子どもの教育資金として親からの援助を受けたいとお考えの方に向け、相続時精算課税制度について解説しています。
相続時精算課税制度を活用し、賢い税金との関わり方を探しましょう。
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弊社へのお問い合わせはこちら相続時精算課税制度とは、どんな制度?
相続時精算課税制度とは、親などから資産の贈与を受けた際に累計2,500万円までは、非課税となる制度です。
ここまで聞くとお得な制度であり、使わないと損と感じるかもしれませんが、一時的に非課税となるだけであり、相続時に課税されるので注意しましょう。
親などの贈与者が亡くなり相続が発生した際に、これまで受けてきた贈与も合わせて相続税を支払う必要があります。
つまり、本来は相続する資産を贈与という形で先送りし、実際に相続が発生したタイミングで清算的に相続税を支払う制度です。
基本的には節税対策にはなりませんが、もっともお金がかかるであろう子育て世帯に親からの支援をしやすくするために整備されました。
相続時精算課税制度の適用対象者
相続時精算課税制度を活用するには、適用対象者の条件を満たす必要があります。
条件は贈与者と受贈者それぞれに定めらており、以下のとおりです。
●贈与をした年の1月1日時点で60歳以上の父母もしくは祖父母
●贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であり、なおかつ贈与者の直系卑属(子や孫)
また民法の成人年齢を20歳から18歳に引き下げられる法改正がされており、令和4年4月1日から施行されます。
法改正に伴い、相続時精算課税制度の受贈者の適用対象も18歳以上に引き下げられておりますので注意しましょう。
相続時精算課税制度のメリット
次に相続時精算課税制度のメリットについて確認しておきましょう。
2,500万円まで非課税で贈与可能
相続時精算課税制度のメリットといえば、やはり2,500万円まで非課税で贈与できる点です。
相続時精算課税制度と同じような制度に暦年贈与という制度があります。
暦年贈与とは、年間110万円までなら非課税で贈与できるという制度であり、こちらも相続税や贈与税の対策に便利な制度です。
ただし、暦年贈与で2,500万円贈与するとなる約22年間という長い期間がかかってしまいます。
相続時精算課税制度なら一度に贈与を受けられるため、マイホームの購入など多額の資金が必要となる場面で効果的です。
また暦年贈与は今後廃止が決定されていますので注意しましょう。
相続でのトラブルを回避
相続といえば、親族間でのトラブルが付き物ですが、トラブルの原因として相続人が死亡してしまい話し合いができない点が挙げられます。
相続人が死亡してしまっているので話し合いでも解決できず、被相続人のみで話し合うためトラブルに発展するケースが多いです。
相続時精算課税制度なら生前に贈与できるので、相続人と被相続人の双方で話し合いができるため、相続トラブルの回避に繋がります。
収益物件なら相続財産の増加を抑制
収益物件を所有している方なら、あらかじ相続時精算課税制度で収益物件を贈与することで相続する資産を抑えられます。
また収益物件により発生した収益に対しては相続税がかかりませんので、お金がかかる子育て世帯にとって大きなメリットです。
収益物件を贈与しておくと、今後発生するであろう相続税の支払いのために資産を貯めておくことも可能です。
相続時精算課税制度の計算方法とは?
では、相続時生産課税制度を利用した場合、相続税や贈与税の計算はどのようにすれば良いのでしょうか。
相続税は相続をした際、すべての方に相続税が課税されると勘違いされている方が多いですが、実際は異なります。
相続税には基礎控除という制度があり、基礎控除額内なら相続税はかかりません。
相続税の基礎控除とは?
基礎控除とは、あらかじめ定めらた額を相続する資産から控除できる制度です。
つまり、相続する資産が基礎控除額内なら相続税はかからず、反対に基礎控除額を超えた場合、超えた額に対して相続税が発生します。
基礎控除の計算方法は、以下のとおりです。
3,000万円+法定相続人数×600万円
つまり、法定相続人が妻と子ども2人の場合、基礎控除額は4,800万円になります。
相続時精算課税制度を活用した場合でも同様であり、相続したトータルの額が4,800万円以下なら相続税がかかりません。
相続する資産が基礎控除額を超えたら?
相続する資産が基礎控除額を超えるようなら、もちろん超えた額に対し相続税がかかります。
相続税の計算方法は、以下の手順でおこないます。
課税される遺産総額を法定相続分の割合で相続したと仮定し、課税される遺産総額を分ける
分けた遺産総額に対し、額に応じた相続税率をかけ、相続税額を算出する
それぞれ算出した相続税額を合計し、相続税の総額を算出する
総額を実際に取得した遺産の割合に応じて按分する
以上の手順で相続税を計算しますが、ここで注意したい点が相続税率は課税される相続税の額による異なる点です。
具体的には下記となります。
●法定相続分に応ずる取得金額1,000万円以下 税率10%
●法定相続分に応ずる取得金額3,000万円以下 税率15% 控除額50万円
●法定相続分に応ずる取得金額5,000万円以下 税率20% 控除額200万円
●法定相続分に応ずる取得金額1億円以下 税率30% 控除額700万円
●法定相続分に応ずる取得金額2億円以下 税率40% 控除額1,700万円
●法定相続分に応ずる取得金額3億円以下 税率45% 控除額2,700万円
●法定相続分に応ずる取得金額6億円以下 税率50% 控除額4,200万円
●法定相続分に応ずる取得金額6億円超え 税率55% 控除額7,200万円
上記のように、相続税率は課税される相続税の額によって異なるので覚えておくと良いでしょう。
相続時精算課税制度の注意点とは?
最後に相続税精算課税制度の利用をお考えの方に向け、注意点を2つご紹介します。
きちんと注意点も理解したうえで制度を利用しましょう。
注意点①基本的には節税にならない
節税対策として相続時精算課税制度を利用しようと考える方がおられますが、基本的に相続時精算課税制度を利用しても節税にはなりません。
相続時精算課税制度は、あくまで相続税の先送りであるという点は理解しておきましょう。
また基本としているのは、収益物件などを相続時精算課税制度で生前贈与した場合は節税対策になるためです。
収益物件により今後相続するであろう資産が増加するのを防げ、代わりに受贈者の収益となります。
注意点②相続時の物納ができない
相続時精算課税制度を利用して生前贈与を受けた土地などの不動産は、物納ができないので注意しましょう。
納税は、お金を支払うだけでなく物納という方法もあります。
物納とは、お金の変わりに土地などの不動産で税金を納める方法であり、相続税の支払いでも使用される方法です。
相続税は現金や株式だけでなく、土地などの不動産にもかかります。
相続税が高くなり、税金が支払えない場合もありますので、生前贈与を受けると物納ができなくなる点は注意しておきましょう。
まとめ
相続時精算課税制度は、お金がかかる子育て世帯にとって魅力的な制度です。
制度の内容を理解し、親などの被相続人と話し合って資産を上手に活用しましょう。
また相続時精算課税制度は、節税対策ではなく相続税を先送りしているという点には注意が必要です。
あらかじめ相続税の内容を把握しておき、きちんと相続税が払えるように準備しておきましょう。