「相続した土地や建物の税金を抑える効果的な節税対策はあるの?」と気になっている方は多いでしょう。
不動産を引き継ぐと納税額が高額になりやすく、さまざまな減税措置が用意されているため、あらかじめ情報収集すると金銭的な負担を軽減できます。
本記事では、3年以内の売却で適用される相続空家の特例と取得費加算の特例をお伝えしたうえで、利用するときの注意点を解説します。
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3年以内の売却で適用される相続空き家の特例
相続空家の特例とは、亡くなった方が居住目的で使っていた不動産を財産として引き継いだ方が所有権を取得してから3年以内に売却すると適用される減税措置です。
具体的には、譲渡所得の金額から最大3,000万円の控除が受けられるため、通常の不動産取引と比較しても高い節税効果が期待できます。
ただし、すべての相続物件に対して3,000万円の控除が受けられるわけではなく、細かく設定された適用要件をすべて満たさなければなりません。
相続空き家の特例の適用要件は、空き家と売却時のそれぞれに設定されています。
空き家の要件は、物件と土地を両方取得している・1981年(昭和56年)5月31日以前の建築物件・亡くなった親族が直前まで住んでいた・引き継いでからずっと空き家であるの4点です。
まず、物件を所有しているだけでは適用されず、物件が建っている土地も含めて所有していなければなりません。
たとえば、土地のみは生前贈与で取得しているのであれば適用外です。
続いて、相続空き家の特例が発足されたのは、日本国内の急速な少子高齢化による空き家問題が深刻化していた背景が関係しています。
空き家が増えると、経年劣化による倒壊・自然災害による火災・放火や違法薬物の取引現場のターゲットになり治安悪化など、周辺地域に多くの被害を引き起こします。
空き家トラブルを防ぐために発足されているため、築年数の古い建物のみが特例対象です。
さらに、亡くなった方が直前まで居住目的で利用していた物件が対象ですが、一人で生活できない状態になって老人ホームなどに入居して空き家となる場合は特例が利用可能です。
なお、不動産を引き継いでから売るまでの期間に誰かが住んだり貸し出しをしたりした場合は、特例は利用できません。
売却時の要件は、相続から3年後の年末までに引き渡し・買主は第三者・取引価格は1億円以下・耐震リフォーム済みもしくは解体済みの4点です。
まず、特例を利用するためには財産を引き継いでから3年後の年末(12月31日)までに売る必要があり、それを過ぎると控除は受けられません。
続いて、該当物件の買主は、親族・同族会社などの特別な関係にあたる個人や法人ではなく第三者でなければなりません。
さらに、取引金額が1億円を超えると控除の対象外となり、分割払いをするのであれば合計金額で特例が適用されるか確定します。
最後に、旧耐震基準の物件をそのまま売っても減税措置は適用されないため、新耐震基準にして売るか解体して更地を売るか選択する必要があります。
合計8つの適用要件をひとつでも満たしていないのであれば、相続空き家の特例は利用できません。
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3年以内の売却で適用される取得費加算の特例
取得費加算の特例とは、通常の譲渡所得の計算に相続税の一部を上乗せできる減税措置です。
そもそも通常の譲渡所得は、「譲渡所得−取得費−譲渡費用」で計算して、プラスになれば譲渡益・マイナスになれば譲渡損失となります。
計算式に出てくる譲渡所得は不動産の売却価額・取得費は不動産の購入価額・譲渡費用は売却のために発生した諸費用を指します。
取得費加算の特例を利用した場合の計算式は「譲渡所得−取得費−譲渡費用−相続税の取得費加算」です。
特例を利用すれば通常よりも譲渡所得の金額を低く抑えられるため、結果的に所得税の節税効果が見込める仕組みです。
ただし、相続物件のすべてに取得費加算の特例が利用できるわけではありません。
取得費加算の特例の3つの適用要件は、相続もしくは遺贈で取得している・財産の取得者に相続税が課税されている・財産を引き継いだ翌日〜納税申告翌日以後3年以内の譲渡です。
たとえば土地や建物を引き継いだときに別の軽減措置などを使って相続税の支払いが一切なかった場合は、通常どおりの譲渡所得の計算式に当てはめて納税額を確定します。
また、財産を引き継いだ翌日から納税の申告期限の翌日までは通常10か月間猶予があるため、実質3年10か月以内の売却が求められます。
期限を過ぎて売買取引が成立しても、減税措置は適用されないため、注意が必要です。
土地や建物は必ずしもすぐに買主が見つかるとは限らず、築年数の古いような中古物件であれば売り出すタイミングが遅くなると特例が使える期限を過ぎる可能性が高いです。
期限ギリギリでの売却活動は精神的にも余裕がなくなり、特例を受けるために期限を重視した結果、市場相場を下回る取引価格で成約してしまうケースも散見されます。
減税措置を受けずに適正価格で売ったほうが手元に残る金額が多い事態に陥らないためにも、販売活動はできるだけ早いタイミングで始めましょう。
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相続した不動産を売却するときの注意点
相続した不動産を売却するときの注意点は、名義変更を済ませる・相続空き家の特例と取得費加算の特例は併用できない・共有状態の売却は困難の3点です。
まず、土地や建物を売却できるのは所有者のみであるため、財産を引き継いだのであれば必ずもともとの所有者から名義変更をおこなってください。
手続きはご自身でも済ませられますが、必要書類の収集などで手間や時間がかかる可能性もあるため、スムーズに進めたい方は司法書士に依頼する方法もあります。
以前までは相続による不動産名義変更は任意でしたが、令和6年4月1日より義務化されています。
昔に引き継いだ財産がある方も対象であり、名義変更の手続きをせずに放置すると10万円以下の超過ペナルティが科せられる可能性があるため、早めに手続きを済ませましょう。
続いて、引き継いだ財産に適用できる減税措置で知られている相続空き家の特例と取得費加算の特例は併用できないため、天秤にかけて節税効果の高いほうを選ぶ必要があります。
特例の申請期間は、土地や建物を売った翌年2月16日〜3月15日であるため、期間内に適用要件を確認したりシミュレーションしたりしてください。
どうしても判断が難しい場合は、不動産を専門的に取り扱う税理士への相談がおすすめです。
最後に、不動産のように分配がむずかしい財産は複数人で所有権を共有すると、売るときに全員の合意が必要であったり手続きで署名・押印が求められたり手間が多くなります。
共有持分のみの売却は買主にメリットがないため、売れないと考えるのが賢明です。
共有者全員が不動産売却に同意していればスムーズに進められますが、誰かが反対しているのであれば遺産分割協議で単独所有にする選択を検討しましょう。
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まとめ
亡くなった親族から引き継いだ土地や建物を売る場合は、最大3,000万円の控除や譲渡所得を減額できる特例が利用できる可能性があります。
ただし軽減措置の特例は適用要件が厳しく、ひとつでも満たしていないと利用できないため、あらかじめ条件を確認してください。
また、特例が利用できる期間は財産を引き継いでから3年以内などの注意点もあるため、売ろうと考えているのであればできるだけ早く計画を立て始めましょう。
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